システム調達編・第1回
「このままでいい」と言われたら
ひとことで言うと
システムの更新は、仕事のやり方を見直せる、数少ない機会です。今と同じものを、もう一度買うだけなら、その機会を逃すことになります。
異動してきたら、最初に確かめること
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解説(テキスト版)
はじめに

情シスには、こんな相談が届きます。システムの更新の打ち合わせで、担当課から、今と同じでいいです、と言われる。
あるいは、担当課が作った仕様の案に、画面も帳票も、今のシステムと同じにすること、と書いてある。
どちらも、よくある場面です。第1回は、このままでいい、と言われたときに、どう考えればいいのかをお話しします。
一言で言うと

先に、一言でまとめます。システムの更新は、仕事のやり方を見直せる、数少ない機会です。
今と同じものを、もう一度買うだけなら、その機会を逃すことになります。
流れのどこか

調達の流れの中では、最初の、相談と、情報収集の段階の話です。
ここで考えたことが、このあとのRFIや、仕様書の中身を決めます。最初がいちばん大事です。
なぜ「このままでいい」になるのか

担当課が、このままでいい、と言うのには、理由があります。
一つは、変える手間です。新しいやり方を覚えたり、手順書を作り直したりするのは、大変です。もう一つは、慣れです。今のやり方で、仕事は回っています。
そして、失敗したくない、という気持ちです。窓口が止まれば、住民に迷惑がかかります。どれも、もっともな理由です。
ですから、責めるのではなく、変えたほうがいい理由を、一緒に見つけていく姿勢が大事です。
サービス設計12箇条

そのときに、手がかりになるのが、サービス設計12箇条です。国が、行政サービスを作るときの考え方として、示しているものです。
利用者のニーズから出発する。事実を詳細に把握する。エンドツーエンドで考える。全ての関係者に気を配る。サービスはシンプルにする。デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める。
利用者の日常体験に溶け込む。自分で作りすぎない。オープンにサービスを作る。何度も繰り返す。一遍にやらず、一貫してやる。情報システムではなくサービスを作る。
今日は、このままでいい、と言われたときに、特に役に立つものを、5つ取り上げます。
利用者のニーズから出発する

1つ目は、第1条、利用者のニーズから出発する、です。
ここで言う利用者は、職員だけではありません。申請をする住民や、事業者も利用者です。
今の画面に慣れた職員にとっては、このままがいちばん楽かもしれません。でも、住民が、何度も窓口に来なければならない手続きなら、そこを変える意味があります。
事実を詳細に把握する

2つ目は、第2条、事実を詳細に把握する、です。
年間の件数は、どのくらいか。1件に、何分かかっているのか。紙は、どこからどこへ回っているのか。
このままでいいのか、変えたほうがいいのかは、数字と、実際の流れを見てから決めます。窓口に行って、仕事を見せてもらうのが、いちばんの近道です。
エンドツーエンドで考える

3つ目は、第3条、エンドツーエンドで考える、です。エンドツーエンドは、端から端まで、という意味です。
仕事には、いろいろな流れがあります。たとえば、住民が手続きを知って、申請書を書いて、窓口に出す。職員が審査をして、結果の通知を作って、住民が受け取る。
この流れの中で、システムが担っているのは、審査や、通知を作るところなど、一部分だけです。
ですから、システムだけを見て直しても、仕事は良くなりません。申請書を、手でシステムに打ち直していたり、通知を印刷して、封筒に詰めていたりすれば、そこで時間がかかったままです。
まず、仕事の流れを、端から端まで並べてみます。そのうえで、全体の流れの中で、どんなシステムがあるべきかを考えます。システムの範囲を広げるのか、前後の手順を変えるのかは、全体を見てから決めます。
オープンにサービスを作る

4つ目は、第9条、オープンにサービスを作る、です。
検討の経過や、決めたことを、関係者に開いておく、という考え方です。担当課と情シスだけで決めずに、窓口の職員や、ほかの課の声も聞きます。
RFIや、仕様書の案を公開して、事業者から意見をもらうのも、オープンに作ることの一つです。
オープンにすることには、もう一つの意味があります。データの形式や、ほかのシステムとのつなぎ方を、公開された標準の形にしておくことです。
そうすれば、次の更新のときに、データを取り出して、別の事業者のシステムにも移しやすくなります。特定の事業者から離れられない、という状態を防げます。
検討を開くと、いろいろな人の知恵が集まって、より良いサービスになります。仕組みを開くと、次の更新のときの選択肢が広がります。オープンに作ることは、今のサービスも、次のサービスも、良くしていくための土台です。
情報システムではなくサービスを作る

5つ目は、第12条、情報システムではなくサービスを作る、です。
目的は、システムを入れることではありません。住民や職員にとって、手続きや仕事が、良くなることです。
ですから、システムを変えずに、手順や様式を見直すだけで、済むこともあります。逆に、システムを新しくしても、仕事のやり方が同じなら、効果は小さくなります。
現場でよくある誤解

現場でよくある誤解を、3つ挙げます。
一つ目。今のシステムの機能を、全部書いておけば安全だ、という誤解です。使われていない機能まで書くと、費用が増えます。今の機能が、本当に要るのかを確かめます。
二つ目。担当課の言うことが、そのままニーズだ、という誤解です。担当課の希望は大切ですが、住民の困りごとや、数字と合わせて考えます。
三つ目。住民の声は、システムの調達には関係ない、という誤解です。住民も利用者です。問い合わせの記録や、窓口の声が、手がかりになります。
異動してきたら最初に確かめること

では、更新の相談を受けたら、まず何を確かめればいいでしょうか。
一つ目。業務の件数と、流れです。年間の件数、1件にかかる時間、紙の動きを、担当課と一緒に書き出します。
二つ目。今、困っていることの一覧です。職員の困りごとと、住民の困りごとを、分けて集めます。
三つ目。そのシステムの利用者は誰か、です。職員だけなのか、住民や事業者も使うのかで、考えることが変わります。
理解度テスト
3問です。答えを選んで、「答え合わせ」を押してください。
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